大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)1492号 判決

被告人 国井イネ子

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意第一点について。

原判決が原判示第一の罪について、酒税法第六十二条第一項第三号を、同第二の罪について、同条同項第一号をそれぞれ適用したことは、論旨の指摘するとおり、原判決書の記載に徴して明らかであるが、刑事訴訟法第三百三十五条第一項により、有罪判決について法令の適用を示すに当つては、判示犯罪事実と相まつて、判決主文が如何なる法令に基いて導き出されたかを了知し得る程度に法令を引用、説示すれば足りるものと解すべきところ、酒税法第六十二条第一項第三号は「第五十三条の規定に違反したる者」のみに対する罰則を規定したものであり、酒税法第六十二条第一項第三号を示せば、おのずから直ちに同法第五十三条の規定に違反して、酒税法において認められた場合でないのに、免許を受けない者の製造した酒類、酒母、醪又は麹を所持し又は譲り受けた者を処罰する趣旨であることが明らかであり、又酒税法第六十二条第一項第一号は「第六十条第一項の罪を犯す目的を以て原料、機械、器具又は容器を準備したる者」のみに対する罰則を規定したものであり、酒税法第六十二条第二項第一号を示せばおのずから、直ちに同法第六十条第一項の規定に違反して、免許を受けないで酒類、酒母又は醪を製造する目的を以つて原料、機械、器具又は容器を準備した者を処罰する趣旨であることが明らかであり、結局原判示犯罪事実と対照すれば、原判示第一の事実については、その所為を酒税法第五十三条に違反して密造清酒及び密造清酒醪を所持したものとして同法第六十二条第一項第三号を適用し、又原判示第二の事実については、その所為を酒税法第六十条第一項の罪を犯す目的をもつて原料を所持したものとして、同法第六十二条第一項第一号を適用したものであることが明らかであり、且つ判決主文が導き出された法律的根拠も亦極めて明瞭であるから、原判決は法令の適用を示すについて欠けるところはないものと解すべきである。従つて、原判決が原判示第一及び第二の事実につき、酒税法第六十二条第一項第三号又は同条同項第一号を適用したのみで、同法第五十三条又は同法第六十条第一項の適用を示さなかつたことをもつて、判決に理由不備の違法又は法令の適用を誤つた違法があるとする論旨は当らないから、理由がない。

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